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1973年12月6日 わたしは14歳で殺された 映画のタイトルはプリティなのに、ショッキングなキャッチコピーの映画『ラブリーボーン(かわいい骨)』。映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ監督ピーター・ジャクソンがメガホンをとり、スティーブン・スピルバーグのドリームワークスが制作を手掛けた。
あらすじ(ウィキペディアより)
強姦された上殺害されてしまった14歳の少女・スージーが、天国から家族や友人、そして犯人の人生を見届ける。
翻訳が映画『ロード・オブ・ザ・リング』の誤訳で時の人になった戸田奈津子女史なので、因縁めいたものを感じた。物語冒頭、12年前の幼いスージーの映像と家族の紹介ではじまるオープニング。悲壮感はなく、穏やかな物語の幕開け。ただし、スージーのナレーションは“天の声”で、彼女は天国にいて14歳で隣人に殺害されたことを告白。ペンギンのスノードームにかぶって、タイトルバック。
クリスマス近くにデパートで大好きな先輩レイにみとれるスージーの後ろで、犯人(ミスター・ハーヴィ)が画面の片隅に映っているのでここはチェックしておくと面白い。物語前半はスージーの趣味や家族の紹介などが後半への布石として語られる。弟が小枝を飲み込んで、病院まで無免許で運転していくスージーの描写はコミカル。
前半の山場は、スージーがハーヴィに誘われ、とうもろこし畑の秘密基地と称した地下室に連れ込まれ、惨殺される場面。臨場感あふれる効果音と音楽が心臓の鼓動とリンクし緊迫感を盛り上げ、直接の描写はないが、殺害されるスージーの心情を観客にも追体験させるような演出になっている。
地下室を脱出したかのようなシーンに映るが、すでにスージーは殺されていて幽体離脱。逃げていくシーンで霊感の鋭い同級生のルースに魂が触れたことがラストのとてもせつない演出に繋がっているので、ここも伏線として見逃せない。
中盤は、殺された後の天国のシーン。ここからがピーター・ジャクソンの本領発揮。美しく広がるパノラマ風景とファンタジーの世界が融合し、遊びに行きたいような天国が描写されている。一方対照的に、スージーの訃報を知らされ、悲しみに暮れる父ジャックをはじめとする家族の描写と演技はよかった。天国にいながら念を送り、ろうそくの炎で父親にメッセージを伝えようとする場面は、家族の絆の大切さを改めて考えさせてくれるような素敵なシーン。
後半は、顔見知りの隣人であり、犯人 ミスター・ハーヴィの正体、恐怖、残虐さ、に迫っていく。スージーが生前残した最後のフィルムを現像した写真に映ったハーヴィの姿からメッセージを感じとった父親ジャック。しかし、先走った行動が仇となり、スージーがいなくなったあと真犯人を探そうと必死になる父ジャックともう過去のこととして忘れたい母アビゲイルの夫婦間はギクシャクし奥さんには逃げられる。復讐しようとバット片手に後をつけたとうもろこし畑の中では覗き趣味があるハーヴィに逃げられ、逆にエッチをしようとしていた若いカップルにフルボッコにされる始末。
ハーヴィの次の標的はスージーの妹リンジー。学業優秀で、勘の鋭いリンジーもハーヴィがスージー殺しの犯人であることを悟る。また、天国のスージーも父親が大けがを負った責任を感じ、戻ってこれなくなるかもしれないと言われ、踏み込む勇気がなかった真相の扉に進む決意をする。
スージーがみたものは、ハーヴィが積み上げてきた過去の猟奇殺人事件の数々と自分が殺された真相だった。ハーヴィは幼い少女ばかりを狙った連続殺人犯で、1960年代から1970年の間にたくさんの事件を起こしていた。また、自分が殺されたあと麻袋に入れられ、錆びた金庫に遺体をしまわれたことがわかる。
リンジーは、ハーヴィが外出したあと証拠をつかむため彼の家へ忍び込み、彼の計画的な犯行を示すノートを手にすることに成功。そこには姉スージーの写真と髪の毛が貼り付けられていた。リンジーに真相を知られたハーヴィは、身支度を整え、スージーの遺体が入った金庫を捨てに行く。近くに住む霊感の鋭いルースはスージーの魂と交わり、レイに最後の挨拶とお別れのキス。
ここが作品として一番せつないかな。ラストに出てくる、“みなさん、末長くお幸せに”という言葉の意味は重い。作品として、天国の描写、残された家族の描写、真犯人に迫っていく描写、ひとつ、ひとつは良くできているが、作品としてはアンバランスな部分が多々。一番失敗していたのは、家を出ていった母親が戻ってきて再会を喜ぶ後ろで、犯人に追いかけられ命からがら逃げて掴んだ証拠のノートを家族に見せず、それを隠そうとするリンジー。違うだろ!!って思いっきり画面に突っ込みを入れていました。
中盤の天国の描写に力が入りすぎて、ラスト キーワードのひとつになっていた遺体の入った金庫が簡単に捨てられてしまうのも、えっ!!て感じでした。もう少しファンタジックな部分は抑えた演出でもいい気がしました。最後、ハーヴィが死んだので溜飲は下がりましたが。
ラブリーボーン - goo 映画
CMに使用されている挿入歌が凄く良い。
劇中歌「Alice」Cocteau Twins
気になっている人もいると思うので豆知識として追記。予告編の印象的な日本語吹き替えナレーションは、青二プロダクション所属の声優 吉川未来女史。
ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス) (2009/12/10) アリス ・シーボルト 商品詳細を見る |
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